ディーセントワーク(障がい者)委員会立ち上げ例会
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ディーセントワーク委員会
2014年度、高知県中小企業家同友会に新しくディーセントワーク委員会が誕生しました。
ディーセントワークとは「働きがいのある人間らしい仕事」のこと。障がい者雇用を軸にして、これを学んでいこうとするのがディーセントワーク委員会です。
- と き 2014年9月9日(火) 18:30~20:45
- ところ 高知市文化プラザかるぽーと9階 第1学習室
- 参加費 無料(懇親会は参加費別途)
この委員会の立ち上げ例会では、3名の経営者の方から
- 障がい者雇用のきっかけ
- 障がい者雇用をしてどうなったか(会社・他の社員・経営者)
- 障がい者雇用を通じてのこれから
- その他課題など
を報告していただきました。
実践者の報告
ハッピーファーム有限会社 萩野 裕章 氏
ハッピーファーム有限会社はミニトマトの栽培・加工・販売業。萩野氏はハギノ建設株式会社の代表取締役でもありますが、障がい者雇用はハッピーファーム有限会社の方で実践されています。
障がい者雇用のきっかけ
きっかけはお父様が安芸市ワークセンター(社会福祉法人安芸市身体障害者福祉会)にお勤めで、「障がい者の職場実習の受け入れ先がない」と相談されたことでした。設備的にすぐ受け入れることは難しかったものの、2010年3月に障がい者職場実習設備等整備事業を実施し、同年6月、知的障がいのある18歳の男性を10日間受け入れたそうです。
翌年の5月には精神障がいのある20歳の女性を実習生として66日間の実践能力習得コースで受け入れ。さらに翌年、その女性を1ヶ月間の職場体験で受け入れたのち雇用されました。そのほか重度身体障がいの50代男性、精神障がいの50代男性もハウスの農業実習で受け入れています。
雇用によってどう変わったか
「今来ている人については特別扱いしなくても十分に仕事ができているし、まわりも特別な努力や苦労なくやれていると思います。」と語る萩野さんは、配布資料で “ちょっとした工夫” を紹介してくださいました。
写真はラベルを瓶にはるためのオリジナル手作り定規。「口で説明するのではなく、わかりやすくやりやすいツールを用いる。考え方や道具ひとつで出来ることが増えます。その人がわかるように・できるように設備や仕事のしかたを考えれば、健常者もみんながやりやすい環境ができます。」
障がい者雇用を通じてのこれから
「出荷データの打ち込みなど、できる・できないは別にして挑戦してもらう。とにかくやってみて、知って、経験してもらおうと考えています。」「コミュニケーションが苦手なところもあるようだけど、もっと笑ってもらえるようにと考えています。」という言葉が印象的でした。
有限会社アフロディア 西川 きよ 氏
オリジナル化粧品開発・卸・販売、エステティックサロン、農業・食品開発・卸・販売を行う有限会社アフロディアは1999年設立。県外の化粧品メーカーの日本総代理店として年間3億円の売り上げがあったものの、成長拡大路線で戦々恐々、社員さんとわかりあえない日々に疲れきっていました。
2004年に同友会に入会し、経営指針を作成する会を受講。仕事を通じて「やりがい」や「いきがい」を感じることができる「人間尊重の経営」を学び、自社の改革に乗り出します。これまでの化粧品メーカーとの提携を解消し、自社オリジナル化粧品開発と全国展開の再スタートをきると同時期に、全社員で経営理念をつくられたそうです。
障がい者雇用のきっかけ
その後、肌の外からだけでなく、体の中からの美と健康を求め、グァバ茶の研究開発を開始。成分研究、自然栽培、商品開発と、社員みんなで分担してあらゆることを学び、実践し、2010年にジュジュグァバティーの販売がスタートしました。
2011年にグァバを育てる自家農園の開園にあたり、次男の通う養護学校で人間の原点を感じ「障害のある方と健常者が一緒に働ける職場を作りたい」と強く思ったその夢に向かって動き始めました。2012年にハローワークを通じて障がい者の女性を雇用されたのです。
雇用によってどう変わったか
社員さんの変化、西川さん自身の変化、会社全体の様々な変化を紹介してくださいましたが、元から本当の家族のような関係に、さらに愛や思いやりがあふれるようになったことが伝わってきました。
障がい者雇用を通じてのこれから
「障がいがあってもなくても、社員さんでもパートさんでも “かけがえのないひとりの人間” という意識をもち、お互いの違いを認め、働く仲間の人生と人格を尊重し、その本質的な能力を最大限に発揮できる組織や環境・しくみをつくり共に育ち合いたい。それこそが経営者の仕事。」西川さんのビジョンは明確でした。
有限会社戸田商行 戸田 実知子 氏
昭和36年創業の戸田商行は、赤松や杉、桧を龍のヒゲ状に削って乾燥させた木毛(モクメン)の製造販売を行っています。主に果物や野菜等を箱詰めする際に使われる緩衝材で、石油製品に対抗できるエコ商品です。
モクメン製造業は年々減ってきており、関西・中四国地区では唯一の製造業者となっているとのこと。そんな歴史ある戸田商行に嫁いできたときには既に障がい者雇用50%で、健常者とともに働く職場が当たり前の環境だったそうです。
障がい者雇用のきっかけ
昭和50年に障がい児・者総合施設「光の村」の職員さんが訪ねて来て根気強く熱心に働きかけたことが最初のきっかけで、しばらく実習生として受け入れたのち、最初の雇用に至ったと聞いているそうです。とにかくその職員さんが本当に熱心で、それに心打たれたご主人の妹さんが福祉系の大学に進学し、光の村に就職するほどだったということでした。
障がい者雇用の悩み
現在3名の障がい者の方が、木の皮剥ぎやモクメンの形成、袋詰めといった様々な作業に携わっているそうです。みんな生活サイクルが規則正しく、几帳面さが必要な作業や障がい者ができると思っていなかった作業もこなしているのですが、どうしても気分にムラがあり、すっかり怠けてしまうことも。そうなると大きな声が飛び交うこともあって、指導力のなさに悩んだという戸田さん。同友会に入会したのはそういったことを解決したいという思いからでした。
障がい者雇用を通じてのこれから
障がい者雇用を進めている他県企業の事例などを同友会で学ぶなか、個性を認め共に育ちあうこと、そして経営理念の大切さを感じた戸田さんは、経営理念の中に「私たちは障がい者と共に育ちあう職場環境を目指します」という一文を加えられました。
「私たちの職場にとって、障がい者はなくてはならない存在です。障がいは多様性のひとつであり、伸びしろも大きい。適正をみつけることが大切だと思います。」と、明確な思いが伝わってくる言葉でした。
グループ討論から質問タイムへ
今回の例会には同友会の会員だけでなく生活支援相談センターや社会福祉法人など会外からもたくさんの方が参加され、高知県障害保健福祉課からは障がい者の雇用事例と施設の製品紹介事例集の本も配られました。グループ討論もとても活発に行われました。
各テーブルからたくさんの質問が出ましたが、「これからも障がい者雇用を拡大していくか」という点については「企業としての規模や売上にも関係してくるため、実習生はすぐに受け入れられても、ただちに雇用を増やすとはいかない」といった率直な答えも帰ってきました。
また、「障がい者の賃金はどうしているか」という質問が出ました。おそらく誰もが気になっていた点だろうと思います。それに対して3名の答えは「ほかのパートさんと同じです。」「ほかの社員と待遇は変わりません。」「社会保険も普通にかけています。」とのこと。会場は感心のどよめきに包まれると同時に、「共育」の本気度が伝わってきました。
ディーセントワーク委員会に注目
誕生したばかりの委員会、今後の活動に注目です。これから障がい者雇用に取り組もうと考えている会員の方はもちろん、こういった様々な活動や学びに興味関心のある会員外の方も、ぜひ例会に参加してみてください。
(広報委員・片岡)
そんな同友会に興味のある方は
まずは例会へのオブザーバ参加をしてみてはいかがですか?
ぜひお気軽にお問い合わせください。
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